2015年6月24日水曜日

濾材の殺菌方法は煮沸消毒だけではなかった

板橋区ホタル生態環境館あれこれ: データ分析: 自然教育研究センターのガス使用量の謎」に、阿部宣男博士時代のホタル生態環境館では、日常的に濾材や飼育道具の煮沸消毒を行っていたという話を書きました。

煮沸消毒は素人の飼育にも使われる方法なので、業務飼育であれば高頻度で行われていても不思議ではないと考えていました。しかし、更に詳しく話を聞いてみると、行われていたのは煮沸消毒だけでは無いと分かりました。記述が不足していた事をお詫びします。上記の記事は後日訂正したいと思います。

さて、以下の写真がその方法を示しています。直火焼きです。ホタル生態水槽内の濾材の一つである「抗火石」を水槽から取り出し、生物等が付着していないことを確認後、直接ガスコンロにかけて雑菌を殺しています。更に、その上からガスバーナーでも焼いています。これを自然冷却して、再度元の水槽に戻していたそうです。

撮影日: 2011年7月22日
撮影者: 阿部宣男博士
撮影場所: 板橋区ホタル生態環境館事務室入口ガス台



抗火石のような多孔質の濾材は、細菌の死骸や細菌が集めた物質でだんだん穴が詰まってしまい、交換が必要になるそうです。問題なのは、多孔質の濾材が目詰りすると、その中に酸素を嫌う「嫌気性細菌」が生息し始めることです。この菌が増えると、酸素濃度が著しく低下し、飼育動物の存続が危うくなるとの事です。

殺菌処理を行うと繰り返して濾材を使えるので、濾材寿命を延ばす効果もあったそうです(とはいえ、数年に一度は交換)。煮沸消毒ではなく、直火焼きを用いたのは以下の理由によるとのこと。
  • 抗火石は隙間が奥の方まで開いているため、熱湯では奥の方に棲む細菌を死滅できないリスクがある。直火焼きの方が殺菌効果が確実。
  • 各水槽に平均10個、せせらぎの濾過槽700リットル×4本の中に、抗火石だけでも合わせて1立法メートル近くあった。この多量の濾材を殺菌するには、鍋で煮るよりも直火焼きの方が効率が良かった。
【追記2015-6-28】
この投稿に関して、松崎いたる区議から以下の質問をいただきました。


「『嫌気性細菌』が増えると、酸素濃度が著しく低下」の意味がわかりません。『好気性』の間違いじゃありませんか?

私の解釈は以下の通りです。尤も、この記事を書いてから調べた付け焼き刃の推論です。

タンパク質やアミノ酸が分解されるとアンモニアが発生し、生物に悪い影響を与えます。

好気性細菌は、酸素を使ってアンモニアを分解し、亜硝酸塩(毒性強い)に変え、更に、これを硝酸塩(毒性弱い)に変えることで環境をキレイにしてくれます【硝化作用】。酸素豊かな水槽のフィルターの中で働いているのは好気性細菌です。

しかし、好気性細菌は硝酸塩を分解できません。硝酸塩も濃度が高くなると有害なので、時々水を入れ換えて硝酸塩の濃度を下げる必要があります。だから、水槽にフィルターを入れてあっても、水換えは必須なんですね。今回、水換え必須の理由を初めて知りました(笑)。

酸素を嫌う嫌気性細菌は、この硝酸塩を窒素(ガス)に変えられます【反硝化または脱窒】。

それでは、好気性細菌と嫌気性細菌の両方があれば、アンモニアを分解して、最終的に窒素ガスとして放出できるので万々歳・・・と思うのですが、そうはうまく行きません。

嫌気性細菌が硝酸塩を窒素に変換する際には、一旦、硝酸塩を毒性の強い亜硝酸塩に変換してしまうのです。嫌気性細菌が作った亜硝酸塩は、一部は嫌気性細菌が窒素に変換するでしょうが、一部は再び好気性細菌が硝酸塩に変換します。

つまり、好気性細菌と嫌気性細菌が同居する環境では、
亜硝酸塩⇒好気性細菌⇒硝酸塩⇒嫌気性細菌⇒亜硝酸塩⇒振り出しに戻る
という繰り返しが続くことになります。

繰り返しが発生すると、好気性細菌の処理する亜硝酸塩が増えるので、好気性細菌がどんどん酸素を消費します。つまり、好気性細菌が働いている環境に嫌気性細菌も発生すると、両者の間で相反する変換が行われ、好気性細菌が更に活発に活動し、結果として溶存酸素量が下がるのだと考えます。

【追記終了】

以上

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