2015年2月28日土曜日

ホタル館の存続を求める会が区に抗議する文書を板橋区に提出

「板橋区ホタル生態環境館廃止を撤回し存続をもとめる会」が、2015年2月27日に、板橋区ホタル生態環境館の廃止に抗議する文を、板橋区の坂本区長と板橋区資源環境部の山崎部長宛に提出しました。

以下にその文書を示します。今回のホタル生態環境館を巡る問題について、区民の立場から論点が整理されており、たいへん価値のある文書だと思います。



以下、論述内容を全文引用します。論点が整理されているので余計な注釈は不要でしょう。一点だけ些細な事ですが、文中の「成虫への孵化率」は幼虫から成虫に生育する率を表しているのだと思います。


板橋区の責任を求めホタル館の廃止に抗議します。

陳情と経過 私たちは「ホタル館の存続と技術の継承」と「ホタル館の再調査」を求める陳情書を提出し、1月20日区の環境委員会においても賛成多数で継続審査となりました。一方資源環境部環境課は『板橋区ホタル生態環境館のホタルなど生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について』(以下、報告書という)を報告しました。区はこの報告をもってホタル館の存続を求める多くの区民との一連のやりとりに終止符を打ち、3月末のホタル館廃止に向けせせらぎに生息する生物の移管をするため1月26日にはホタル館の水を抜く作業を強行しました。

私たちはこの1年間ずっと区議会の定例会や環境委員会を傍聴し、2度の住民説明会にも出席してきました。事の発端は、区が昨年1月に突如、当時の飼育担当職員(以下、元職員)を恣意的に除外し“せせらぎに土足で入りホタルの幼虫の数を数える生息調査”をしたのが始まりです。結果はあまりに少ない2匹(推定23匹)という数字でした。これについては複数の専門家が不適正な調査であったと指摘しています。実際この夏にはせせらぎで211匹のホタルが飛んだと報告され、成虫への孵化率を考えると、23匹ではなく3000~4000匹の幼虫がいたはずだと言うことが明らかで、この事実からも調査の不適切さがわかります。区は5月にホタルの「あり方検討会」の報告をふまえ、平成27年3月末のホタル館の廃止を決定しました。「区民の声」には耳をかさず、「区議会軽視」の一方的な廃止宣言でした。区民も議員もそれぞれ説明会や区議会で、調査についての疑問や、環境課が区議会という公の場で、2月から早々と口にしてきた「ホタル持込み疑惑」「警察に相談している」などの発言に対する区の本意を、何度も質しましたが、区の回答は「調査中」「報告書作成中」「係争中なので答えられない」を繰り返すばかりでした。これが、11月の環境委員会までの経過です。そして今回の「報告書」となりました。区民や議員の質問に対してまともな回答を1年間もしてこなかった区の誠意のなさと、年度末まで2ヶ月余りというこの時期に報告書を出し、問答無用といわんばかりの形で収拾しようとする区の姿勢に怒りを禁じえません。

報告書への疑問 区は報告書で、新しい重大な報告をしています。「DNA鑑定の結果、ホタル館のゲンジボタルは北関東・東北地域のホタルではなかった」「当時の飼育委託業者『むし企画』(以下、元業者)が、花と称してホタルをホタル館に送付したのではないか」とし、「ホタル館に成虫が持ち込まれたと考えられる」、そして「元職員は、大熊町のホタルの25年の累代飼育はしていなかった」と結論づけたのです。DNA鑑定の結果は、衝撃的でただただ驚くばかりです。

福島原発事故で福島県大熊町のホタルが全滅してしまいましたが、大熊町を故郷とするゲンジボタルが、板橋区のホタル館で25年間累代飼育され毎年光を放っていました。そのことは大熊町の皆さんの励みとなり、私たちの誇りでもありました。DNA鑑定は根幹にかかわることですから重要かつ重大な問題です。区は第三者や研究者の検証もなく閉鎖的に調査をし、報告書の作成は環境課のみで作成されたものです。私たちはこのDNA鑑定を俄かに信じることができません

ホタル持込みについては「関係者甲」の証言と、宅配便ドライバーの箱の重さの感想と宅配便の伝票が証拠とされます。「関係者甲」がどういう立場の人かが明らかになっていない下で、その証言が信用に値するかどうかの疑問が残ります。また宅配伝票に記入してある「花」は「ホタル」のことと言い切るのは推測でしかありません。元職員は6月に懲戒解雇の撤回を求めて、「元業者」は7月に契約解除の損害賠償を求めて、東京地裁に区を提訴しています。裁判で真っ向から対立している一方の区が、他方の元職員や元業者のホタル持込みを一方的に主張するのは違和感を拭えません。元職員や元業者の主張がきちんと報告されていないことも納得できません。今回の環境委員会での陳情の採択時に「この報告書も係争になる恐れがある」とし“継続”に挙手した会派があったことを申し添えます。

廃止をなぜ急ぐのか そもそもホタル館の廃止を検討するきっかけは、平成24年度行政評価の「休廃止」という結果です。その取り組み期限は「平成28年3月」となっています。区は昨年5月、存続の陳情が継続審議の最中に、1年前倒しの「27年3月末」のホタル館の廃止を決定しました。当事者が裁判で係争中、廃館後のホタルの引取先が未決定という状況が追加された今回も、「27年3月末」の廃止を踏襲しています。さまざまな問題が未解決のまま廃止をなぜ急ぐのでしょうか。ホタルの引取先に関しても“補助制度は何もなく施設も経費も自腹で調達できる団体”に丸投げするという区の考え方には、区のホタル館とホタル、ひいては区民に対する責任が全く感じられません。ホタル引取先に対する条件と、区民が参加できるシステムを再検討願います。

管理責任と説明責任 区のホタル館に関する一連の責任も曖昧のままになっています。元職員や元業者の不正をあげつらうなら区の管理責任も同時に明らかにするべきですし、この1年間の区民や区議の疑問に対する区の説明責任もきちんと果たすべきです。たとえホタル館の廃止をするとしても、もっと丁寧な廃止の仕方があったはずです。区自らが取得したホタル飼育の特許を捨て、ホタルの命をぞんざいに扱ったと言わざるを得ません。区の財産を放棄した区の責任の重さは図り知れません。ホタル館の廃止・存続にかかわらず、区の責任を区民に対し明確にしてください。

抗議 区のこの一年の足早な経緯、廃止ありきの筋書きに沿ったような形でホタル館廃止という幕引きとなるのなら、年間3万人が訪れる住宅地の中のせせらぎに飛ぶホタルを楽しみ、“ホタルの棲む街”を誇りとしてきた区民としては、非常に残念無念です。2007年の教育委員会の不祥事と同様、このホタル館廃止の件が、板橋区の歴史の中で汚点となる日が来るのではないかと懸念します。さまざまな問題がある中でのホタル館の廃止に強く抗議します。


以上

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